化学療法内科
更新日:2022年5月9日
化学療法内科について
化学療法内科部長 五月女 隆
複数の病院(がん専門病院、大学病院を含む)において様々な病気の内科的診療に携わり訓練を積んだ経験豊富なスタッフが、薬によるがん(悪性腫瘍)の全身的治療を行います。それぞれの診療科でがんと診断を受けてから当科に来ることになりますが、特定の臓器に偏ることなく全種類のがんに対応できます。治療前、経過中にかかわらず局所的治療が最適と判断したときは、総合病院の強みを生かしそれぞれの診療科に速やかに依頼する体制を取ります。持病のある方でも、必要に応じ院内のそれぞれの専門家に協力を仰ぎながら治療することができます。当院は厚生労働省指定の地域がん診療連携拠点病院で、日本がん治療認定医機構認定研修施設となっています。
受診案内(予約制)
主な診療及び診療実績
まず、気持ちを受け止めます。
がんと診断され病名を告げられると、「こわい」、「おそろしい」という気持ちになるのではないでしょうか。最初の診察の時、同じ人間としてその気持ちを受け止め、どのようにしてその気持ちを和らげることができるかを考え、なるべく早く晴れやかな気持ちで過ごせるような方向付けをします。
患者さんそれぞれにとって、最適な治療法を選択します。
新聞や雑誌の記事などで、がんの化学療法が著しく進歩したと聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、化学療法単独の効果は残念ながらまだまだ不十分です。ある進行・転移がんの平均生存期間が1年から2年と倍に延びたといっても、70歳の時がんが発見された人が、71歳が寿命となるか、72歳まで生きるかの差に過ぎません。私たちは急性白血病や悪性リンパ腫のような血液のがんの治療を通じ、「がんを薬だけで治す」ことを経験し、固形がんでも同じようにがんを消失させて普通の生活に戻してあげることを常に目標に据えていますが、なかなかうまく行かず治療の限界を実感していました。
しかし、手術で取り切れないような大きながんを化学療法で小さくしてから手術で取り除く方法や、手術で取り残したがんに放射線をかけてがんをつぶしてから化学療法を加えてがん細胞を根絶する方法があります。これらは、化学療法の進歩に基づくものです。化学療法だけでなく手術や放射線治療、血管塞栓(そくせん)術、焼灼(しょうしゃく)術などを組み合わせる方法を、集学的治療と言います。
院内、院外の他科の医師と協力し集学的治療を行った結果、従来の治療法では歯が立たなかったがんを消滅させることができるケースも少しずつ増えてきました。
また、がんが消えなくても、小さな状態でがんが身体に害を及ぼさない状態であれば、長期間負担の少ない薬を使いながら、「大きくならないように」保つことで通常の生活を送ることができる方もいます。これも化学療法が進歩した結果できるようになったことです。
病気は「治す」ことが理想で、私達もそれを究極の目標とします。しかし、がんの種類や進行の度合いによって、「治りやすい」がん、「治りにくい」がんがあるのは確かです。いずれにせよ、不安を感じず、人間らしく生活ができるようにお手伝いをしていきたいと思っています。
「化学療法」とは何でしょうか?
現在、わが国では約170種類の薬ががんの治療を目的に用いられています。最初に使われるようになった薬剤は大量の放射線と同様に白血球を減らす働きがあることが偶然に発見された化学物質で、1950年代以降様々な物質が開発されました。白血球は人体の中で増殖が盛んな細胞の一つで、同様に増殖が盛んな細胞であるがん細胞を減らすことができないかと考えたのが事の始まりです。いろいろな薬剤を組み合わせて使う方法(多剤併用療法)により血液腫瘍などの一部では劇的な効果を示し治る方も出てきましたが、その他の大部分では、ある程度縮小するものの根絶に至ることはまれでした。
正常の細胞にはなく、がん細胞だけが独自に持つ性質が判明し、細胞の増殖に関与する細胞内の核酸や細胞表面のたんぱく質の機能を抑制する物質が合成され、実際に使われるようになったのが後で述べる分子標的薬です。
なぜ、専門の部署で化学療法を行うのでしょうか?
細胞を減らす働きのある薬は、副作用が問題となります。身体にとって優しい薬ではなく、使い方によってはむしろ毒となる薬ですから、それを身体から出そうとして「おう吐」という反応が起こります。日々伸び続ける髪の毛の根元の細胞(毛母細胞)や口の中の粘膜の細胞も増えなくなるので、脱毛や口内炎がおきます。白血球、毛母細胞や粘膜細胞は時期が来ればもとに戻るのですが、がんの細胞が元に戻っては困ります。正常の細胞を元に戻し、がん細胞はつぶしてしまう(もしくはおとなしくしていてもらう)のが理想的な薬の使い方ですが、患者さんそれぞれに合わせた微妙な投与量の調整(さじ加減)が必要です。
約170種類の薬が使われると言いましたが、それぞれ性質は異なります。副作用の強いものと弱いものがあり、副作用の出る部位(血液、粘膜、肝臓、腎臓、肺、心臓、神経、皮膚)、出る時期(当日、1週間以内、2、3週後、数年後)も薬によってそれぞれ異なり、人それぞれ個人差があります。患者さん一人一人に取って最もふさわしい薬の量や組み合わせ、投与期間を決めるのは一見簡単そうに見えますが実は職人芸の一つであり、一朝一夕で身につくものではありません。何百例、何千例の経験を積み重ね、身体全体、全ての臓器に関する知識を携えた上で、日々生み出される新しい治療法の知識も蓄えていかなければなりません。
分子標的療法とはどんな治療法でしょうか?
がん細胞独特の性質とその増殖のメカニズムの解明に伴い、核酸やたんぱく質の「分子」レベルでの「標的」を対象とし細胞破壊、増殖抑制作用をもたらす薬剤が開発され、21世紀に入り続々と実用化されました。以下のように、わが国でも多くの分子標的薬剤が使用可能となりました。
A.抗がん剤とは異なる用途で用いられてきたが、検証の結果腫瘍特異的な分子に作用していることが判明したもの(あるいはその誘導体)
- トレチノイン(ベサノイド)
- タミバロテン(アムノレイク)
- 三酸化ヒ素(トリセノックス)
- サリドマイド(サレド)
- レナリドマイド(レブラミド)
- エベロリムス(アフィニトール)
- テムシロリムス(トーリセル)
B. がん細胞の増殖、細胞死に関係しがん細胞に存在する既知の分子に対し、特異的に作用することを期待して作られたもの(*は殺細胞作用のある物質との合剤)
注射薬
- リツキシマブ(リツキサン)
- イブリツマブチウキセタン(ゼヴァリン)*
- オファツムマブ(アーゼラ)
- オビヌツズマブ(ガザイバ)
- アレムツマブ(マブキャンパス)
- モガムリズマブ(ポテリジオ)
- ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス)*
- ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)*
- ボルテゾミブ(ベルケイド)
- トラスツズマブ(ハーセプチン)
- トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)*
- ペルツズマブ(パージェタ)
- セツキシマブ(アービタックス)
- パニツムマブ(ベクティビックス)
- エロツズマブ(エムプリシティ)
- ダラツズマブ(ダラザレックス)
- アテロリズマブ(テセントリク)
- アベルマブ(バベンチオ)
- デュルバルマブ(イミフィンジ)
- イノツズマブオゾガマイシン(ベスポンザ)*
- ブリナツモマブ(ビーリンサイト)
内服薬
- イマチニブ(グリベックなど)
- ニロチニブ(タシグナ)
- ダサチニブ(スプリセル)
- ボスチニブ(ボシュリフ)
- ポナチニブ(アイクルシグ)
- ギルテリチニブ(ゾスパタ)
- ボリノスタット(ゾリンザ)
- パノビノスタット(ファリーダック)
- イブルチニブ(イムブルビカ)
- イキサゾミブ(ニンラーロ)
- ロミデプシン(イストダックス)
- ゲフィチニブ(イレッサ)
- エルロチニブ(タルセバ)
- アファチニブ(ジオトリフ)
- オシメルチニブ(タグリッソ)
- ダコミチニブ(ビジンプロ)
- クリゾチニブ(ザーコリ)
- アレクチニブ(アレセンサ)
- セリチニブ(ジカディア)
- ローラチニブ(ローブレナ)
- ラパチニブ(タイケルブ)
- ソラフェニブ(ネクサバール)
- スニチニブ(スーテント)
- パゾパニブ(ヴォトリエント)
- アキシチニブ(インライタ)
- レゴラフェニブ(スチバーガ)
- ベムラフェニブ(ゼルボラフ)
- ダブラフェニブ(タフィンラー)
- トラメチニブ(メキニスト)
- エンコラフェニブ(ビラフトビ)
- ビニメチニブ(メクトビ)
- レンバチニブ(レンビマ)
- バンデタニブ(カプレルサ)
- パルボシクリブ(イブランス)
- アベマシクリブ(ベージニオ)
C. がんの周囲に存在し、がん細胞の増殖を促進する分子及び組織に対し特異的に作用することを期待して作られたもの
- ベバシズマブ(アバスチン)
- ニボルマブ(オプジーボ)
- イピリムマブ(ヤーボイ)
- アフリベルセプト(ザルトラップ)
- ラムシルマブ(サイラムザ)
これらの薬剤は腫瘍細胞に特異的に作用し、正常細胞への悪影響がないことが期待されましたが、一般に副作用は従来の「殺細胞的」抗がん剤に比べ軽度であるものの、異なるタイプの副作用(皮疹、血栓形成など)を示し、まれながら致死的なものもあり新たな対策が必要となっています。効果の面では、全体として治療成績を高め、従来の抗がん剤に取って代わっているものもあります。一般的に作用は穏やかであり、特に腫瘍が大きい場合は十分に効果を発揮しません。
Cのベバシズマブとラムシルマブ、アフリベルセプトは腫瘍血管新生阻害薬、ニボルマブとイピリムマブはがんの周囲の免疫細胞の働きを高める薬で、いろいろながんに対する効果が期待され現在世界中で効果の検証が行なわれています。
新患患者内訳(令和3年4月現在) 単位:件
開設以来あらゆる領域のがんの治療を担当し、経験を日々積み重ねています。
診察室は2階の外来化学療法室(20床)の中にあります。一般外来とは離れた静かな環境で診察を行っています。平日は専任の医師が常駐しており、化学療法内科以外からオーダーされた患者さんの化学療法室での対応も適宜行っています。
外来化学療法室のスタッフは、看護師8名(がん化学療法看護認定看護師1名、乳がん看護認定看護師1名、緩和ケア認定看護師1名を含む)、受付担当事務職員1名から構成されています。地元の身近な治療施設としてアットホームな雰囲気できめの細かいケアをしています。
外来ではセカンドオピニオンの対応もしています。がんの種類は問いません。予約制ですが、なるべくお待たせしない体制を取っていますので地域連携課までお問い合わせください。
スタッフ紹介
五月女 隆(診療局副局長 兼部長、平成2年卒)
専門分野 | 悪性腫瘍の薬物療法(全般) |
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所属学会 | 日本癌治療学会 |
井上 真佐子(医長、平成27年卒)
専門分野 | 悪性腫瘍の薬物療法(全般) |
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お問い合わせ
松戸市立総合医療センター
千葉県松戸市千駄堀993番地の1
電話番号:047-712-2511 FAX:047-712-2512
