令和4年度企画展「古写真で見る徳川昭武の生活とその視線」開催中
更新日:2022年7月19日
徳川昭武の目には明治の松戸はどのように映ったのでしょう
展覧会概要
江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟で、水戸藩第11代藩主であった徳川昭武は、明治17年(1884年)に戸定邸に移り住み、狩猟、釣り、陶芸など様々な趣味を楽しむ中、写真にも熱中しました。写真がまだ珍しく高価だった時代、昭武は、自身の家族だけでなく、江戸川流域の身近な自然、郊外の農村風景など、多くの枚数を費やして生活の一幕を写しとっています。
彼のまなざしを映した古写真と、昭武が手がけた趣味の作品、当時の生活を記録した資料群から、徳川昭武の後半生を紹介し、昭武が見ていた明治時代の松戸から、私たちが見ている現在の松戸へとつながる人・場所・時間に注目します。
会期詳細
前期
令和4年7月16日(土曜)から令和4年9月25日(日曜)
後期
令和4年10月8日(土曜)から令和4年12月25日(日曜)
※前期と後期の間に、展示替え休館(9月26日から10月7日)があります。休館日にご注意ください。
展示詳細
プロローグ カメラの歴史と昭武
19世紀に写真撮影技術が確立してからの国内外の流れと、徳川昭武の写真への関心についてまとめました。
また、自転車、陶芸、狩猟、といった写真以外の徳川昭武の趣味や、写真にまつわる資料についてご紹介します。
第1章 明治の松戸-徳川昭武の視線
徳川昭武の趣味のひとつに写真があります。明治31年(1898年)に兄・慶喜が戸定邸を訪問した際、邸宅の内外を写真に撮っています。昭武も明治35年頃、甥・篤敬や慶喜の影響を受けて本格的に写真を撮るようになったと考えられ、明治39年頃から明治42年(1906年頃~1909年)にかけて昭武が撮影した写真は、1,000枚にのぼります。
撮影対象は、家族や親戚、友人といった身近な相手にとどまりません。昭武は、戸定邸に勤める職員、地域の農家や漁師、子どもたちなど、当時の松戸に暮らしていた人たちにもたびたびレンズを向け、彼らの心情まで汲み取れるような写真を残しています。人物のほかにも、風景、地域の行事、植物など、興味関心を持った対象を、広く、時に深く、追及していた様子もうかがえます。
かつての街並みや自然、人々の生活が写る写真を見ることで、現在に生きる私たちは、明治時代を具体的に思い描くことができるのです。昭武の目にとまったもの、写真で切り取ったものは何だったのでしょうか。
第2章 徳川昭武の生活
徳川昭武は、私邸(=個人的な住まい)として戸定邸を建てて、松戸に移り住みました。この戸定の地で昭武は、家族と過ごし、趣味を楽しむ生活を送りました。
仲が良かった徳川慶喜(兄)、昭武の後に水戸徳川家当主となった徳川篤敬(甥)や徳川圀順(篤敬の子)、徳川家達(徳川宗家第16代当主)が遊びに来たり、写真師や陶芸の専門家が訪れることもありました。また、皇太子・嘉仁親王(後の大正天皇)や、東久邇宮、朝香宮、北白川宮ら皇族がお立ち寄りになるなど、戸定邸は折々に大切なお客様を迎えました。
戸定邸では、親戚の集まりや地域の方を招いて会食などが行われることもありました。ビールや果物など心づくしの品がふるまわれ、庭園は饗応(=おもてなし)の場として機能していました。
第3章 現在の松戸-交わる視線
明治時代の痕跡や雰囲気は、現在も松戸市内の各所に残っています。古くからの寺社や保護樹木、戸定邸や戸定邸の庭園は、現在でも当時の面影が残っており、古写真の撮影位置を特定することができます。
一方で、地形や雰囲気が大きく変わり、過去の時代の痕跡がわからなくなることもあります。地盤の整備や埋め立て工事、線路や道路、ビルの建設によって従来の景観が失われていることも珍しくありません。
そうした変化の中、地域の行事や各地域に継承されてきた習慣が今でも明治と現在をつないでいます。明治時代、戸定邸の庭には秋葉神社の御輿が入り、徳川昭武が神社に奉納を行うなど、戸定邸と地域とは明確につながっていました。現在、四萬六千日献灯 松戸宿坂川献灯まつりなどを通じて、戸定邸と地域の方々との間に時代を超えた新たなつながりが生み出されつつあります。
エピローグ 過去と未来をつなぐもの
明治17年(1884年)4月に座敷開きを行った戸定邸は、明治~大正~昭和~平成~令和と5つの時代を経て、令和4年(2022年)、建設から138年を迎えました。戸定邸は徳川昭武の住まいとして始まりましたが、現在は、国指定重要文化財として松戸市が管理しています。
文化財は時間を超えて存在し、各時代の情報を後世につなぐ役割を果たしています。博物館施設が扱う品物(資料)も同様です。人、物、場所がつないだ時間が積み重なり、それらはやがて歴史になっていきます。
戸定邸と資料は、松戸徳川家が大切に守り伝え、松戸市が受け継いだことで、公共の財産として現在まで残りました。文化財として、地域の文化発信の拠点として、季節を感じる癒しの空間として、これからも戸定邸は未来へと続いていきます。庭園が成長を続ける様子も併せて末永く見守っていただければ幸いです。
展覧会イメージ
展示品
約90点(作品保護のため入れ替える品や、複写写真、パネルを含みます。)
特別企画
8月には市内アーティストとコラボし、期間限定のインスタレーション展示を予定しています。
ご注意ください!
- 期間中、作品保護のため、一部展示替えを行います。
- 作品のコンディションによって、展示内容が変更になる可能性があります。
- 展覧会会期は前期と後期に大きく分かれています。展示替え休館があります。