令和8年度教育施策方針
更新日:2026年2月20日
令和8年2月20日、令和8年松戸市議会3月定例会本会議で教育長が発表した教育施策方針です。
はじめに
教育は、人を育て、人が育つことでより良い環境が築かれ、その環境が次の世代を育てていくという、持続的な好循環を生み出す力を持っています。時代がどのように移り変わろうとも、教育は常に社会や地域の礎であり続けなければなりません。私は、この教育の持つ力こそが、松戸市の未来を形づくる原動力であると強く信じております。
さて、松戸市の未来を担う子供たち一人ひとりが、健やかな人格を形成し、変化の激しいこれからの社会を自らの力でたくましく生き抜いていくためには、教育を通じて必要な資質・能力を着実に育んでいくことが不可欠です。そして、人生100年時代と言われる今日、子供から大人まで全ての世代において「どのように学び、どのように生きるか」を考えることの重要性が一層高まっています。
また、教育には、学校教育と社会教育・生涯学習の二つの視点が欠かせません。年齢や立場を問わず、誰もが身近な場所で学び続けることのできる環境が整ってこそ、人は学びを通じて自己肯定感や自己有用感を高め、社会の一員として役割を果たしていると実感を持つことができます。そのような学びの循環を支える教育環境の整備が、今まさに求められています。
私はこれまでも「変化への対応と基本の徹底」という考え方から、変化への意識を持ち、基礎・基本を大切にすることを申し上げてまいりました。社会や価値観が大きく変化する時代だからこそ、新しい課題に柔軟に対応する一方で、教育の根幹となる基本を揺るがすことなく大切にしていく姿勢が必要です。ここで、教育が果たすべき役割を「人を育てること(人づくり)」と「環境を築くこと(環境づくり)」の基本とすべき二つの視点から申し上げます。
まず、「人を育てること」についてです。教育基本法に基づく人材育成は、時代が変わっても決して色あせることのない教育の基本です。多様性が尊重される社会においても、人と人とがつながり、互いを認め合いながら生きていくことの大切さは変わりません。教育を通じて、「自ら考え判断し行動できる自立した人材」「他者を尊重し、公共の精神をもって協働できる人材」「正義と真理を重んじ、倫理観を備えた人材」「平和で持続可能な社会の形成に参画できる人材」を育むことは、本市教育行政として、今後も徹底して取り組むべき基本であると考えます。
次に、「環境を築くこと」です。先行きが見通しにくい時代であるからこそ、教育環境についても、時代の変化を的確に捉えた改革が求められています。「松戸のみんなが、みらいを創る『松戸の教育』」を基本理念とした「松戸市教育大綱」を尊重し、昨年度より学びの松戸モデル「松戸市教育振興基本計画」の策定を進めてまいりました。子供たちをはじめ、多くの市民の皆様のご意見を伺いながら、審議会での慎重な審議を経て、年度内に成案化する予定でございます。人が育ち続けるための安心・信頼・協働の環境を築くことが重要であり、本計画は、令和8年度より本市教育委員会の最上位計画として始動し、より良い教育環境を構築するための指針となるものです。
また、本計画の推進と未来の教育環境を創造していくために、教育委員会の組織を見直し、新たに「みらい教育創造部」を設置いたします。学校教育と社会教育・生涯学習の二つの学びを確実に前進させ、よりよい教育環境の構築を目指してまいります。
人を育て、環境を築き、その積み重ねによって、誰もが安心・安全のもとで豊かに暮らせる基盤を整え、多くの人々に笑顔がある社会を築くことこそ、本市教育委員会が果たすべき重要な役割と考えております。
ここに、令和8年度の教育施策方針をお示しし、本市教育委員会が取り組む施策について、新たに策定する、学びの松戸モデル「松戸市教育振興基本計画」の9つの目標に沿って、順次申し上げてまいります。
新年度の施策
目標1 学ぶ意欲の育成と確かな学力の向上
目標1「学ぶ意欲の育成と確かな学力の向上」について述べさせていただきます。
学校教育の充実においては、国が進める「令和の日本型学校教育」を本市においても更に推進するため、全ての子供が「主体的・対話的で深い学び」を実現できるよう授業改善に取り組みます。そのため、一人ひとりの学びを尊重しながら、対話や協働を取り入れた授業づくりを推進し、子供が自ら問いを持ち、考えを深める力を育成できるよう、計画訪問や各種研修会等を通じて指導・助言を重ねてまいります。
そのためにも、自ら見い出した課題に対し、情報を集め、整理・分析する「探究的な学び」が重要です。総合的な学習の時間を核とし、教科横断的に学びながら、多様な知識や技能を関連付け、自らの考えを広げ、深める探究の過程を支えていくカリキュラムマネジメントが実践できるよう支援してまいります。
また、これらの学びの基盤となる言語活用能力・情報活用能力を育成するためには、本市独自の「言語活用科」がこれまで以上に重要になってまいります。論理的・批判的思考力やコミュニケーション能力を育む指導の充実を図るため、言語活用科のワークブック及び指導案を更新します。
次に、幼児期から小学校への円滑な接続を図るための幼保こ小連携ですが、生活や学びの連続性を重視し、子供が安心して小学校生活を始められる環境を整えます。その一環として、小学1年生を対象とした松戸市版「スタートカリキュラム」を作成いたします。
次に、松戸市立松戸高等学校についてです。令和7年度、創立50周年を迎えた市立松戸高校では、引き続き、「市松エフェクト」の理念のもと、キャリア教育・グローバル教育に特色を持たせ、「逞しくジリツ(自立・自律)した18歳」を育ててまいります。また、今年度、千葉大学園芸学部と締結した「高大連携事業に関する協定」に基づき、大学レベルの専門教育に触れる機会を提供するなど、多様で充実した教育活動を展開してまいります。
目標2 豊かな心の育成
続きまして、目標2「豊かな心の育成」についてです。
子供の権利擁護や意見を表明する機会確保の大切さについては、意識を教員や子供たち自身が高めることで、子供の人権が尊重された学校や社会づくりを推進いたします。
中でも、いじめ防止は学校教育の根幹をなすものです。いじめの未然防止と早期発見・早期対応、そして継続支援を確実に行うため、各校における松戸市版「豊かな人間関係づくりプログラム」の活用や「学級経営サポートシステム」の分析・活用、市教委の「いじめ事案支援チーム」やリーガルアドバイザーの訪問等を引き続き進めてまいります。
また、いじめ重大事態への迅速な対応をより確実にするため、いじめ防止対策委員を現行の2倍に増員いたします。
いじめの未然防止のための専門的な支援体制を一層整えるとともに、いじめ重大事態発生後の対応強化を図ることで、子供一人ひとりの安全と安心を守ってまいります。
目標3 健やかな体の育成
続きまして、目標3「健やかな体の育成」についてです。
学校体育活動において、子供たちが運動に関心を持ち、自ら積極的に取り組む態度を育成するとともに、学校保健活動では、医師会、歯科医師会、薬剤師会との連携を深め、それぞれの連携事業であります「まちっこプロジェクト」「フッ化物洗口事業」「薬物乱用防止」などの充実・拡大に取り組んでまいります。
また、松戸市や千葉県など地域の食材を身近に感じ、理解を深めることができるよう、児童生徒に対し、給食を教材とした「食に関する指導」の充実などを通して、子供たちが自ら健康への意識を高められるように取り組んでまいります。
目標4 多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂
続きまして、目標4「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」についてです。
まず、特別支援教育についてですが、障害の有無にかかわらず、全ての子供が互いに尊重し合い、共に学び合える学校を築いていくことを原則といたします。そのために、特別支援学級の全校設置を進めるとともに、研修プログラムを整備し、教職員の専門性向上を継続的にサポートいたします。また、新たに「特別支援教育課」を創設し、誰もが安心して学び、成長できる環境の実現を目指します。
次に、不登校児童生徒への支援に関しましては、どの関係機関にもつながっていない子供をゼロにすることを目指します。そのために、多様な課題を持つ子供たち一人ひとりにとって、安心できる学校内外での多様な居場所づくりを一層推進してまいります。加えて、新たに、心理的ケア等の講座を保護者向けに開催し、家庭と共に子供を支える環境を整えてまいります。
次に、ヤングケアラーの支援や子供の貧困対策についてですが、早期対応を常に心がけ、支援が必要な児童生徒や家庭を、適切な支援機関につなげるようにしてまいります。そのため、スクールソーシャルワーカーによる学校や家庭への働きかけを進めるとともに、教員が課題を見い出せるよう、昨今の子供を取り巻く家庭の実情に関する研修を実施してまいります。
また、教育が福祉・医療と連携する重要性から、スクールソーシャルワーカーの活用による迅速な情報共有を図り、課題に応じた支援を早期に開始できる体制を整備してまいります。その上で、こども家庭センターなど関係機関と連携・情報共有を強化し、切れ目のない支援を実現してまいります。
さらに、帰国・外国人児童生徒の増加に伴う日本語支援の充実は大変重要な課題でございます。来日して間もない学校編入前の児童生徒には「プレスクール」にて初歩的な日本語指導を行い、学校生活への円滑な移行を支援いたします。編入後の日本語指導は在籍校にて行うことが原則となりますので、「にほんごルーム」の充実を図っていくとともに、未設置の学校には日本語ボランティアを配置します。多様な文化を尊重し、すべての子供が安心して学べる体制を整えてまいります。
目標5 学校・家庭・地域の連携と協働の推進
続きまして、目標5「学校・家庭・地域の連携と協働の推進」についてです。
学校・家庭・地域が力を合わせて子供を支える環境を整えるため、将来的に市立小中学校すべてがコミュニティ・スクールとなり、地域学校協働活動を一体的に進めることができるような方策を検討し、積極的な普及啓発活動及び立上げ支援を行ってまいります。
次に、部活動についてですが、地域展開に向けた取組みを進めるため、有識者、団体関係者、学校関係者、保護者など、さまざまな立場の方からご意見をいただく懇談会を設置し、そのご意見を基に子供たちが安心して活動を続けられる持続可能な仕組みを構築することで、地域と学校が協働する新しい取組みの形を目指してまいります。
目標6 人生100年時代を見据えた生涯学習の推進
続きまして、目標6「人生100年時代を見据えた生涯学習の推進」についてです。
図書館におきましては、今年度に第2次松戸市子どもの読書活動推進計画を策定しております。子供たちが本の魅力を表現し、読書のきっかけをつくる取組みとして、引き続き、「松戸っ子おすすめ本」POPコンクールを実施してまいります。
次に、文化財の保存・活用についてです。
国の重要文化財である戸定邸や国の登録有形文化財である旧齋藤邸などの特別な会場において、各種の文化芸術活動の展開を「松戸版ユニークベニュー」と称して推進してまいります。
また、市教委が所蔵する美術コレクションの中から本市に関連のある作家に焦点を当てて、展示を行う企画展「(仮)つたえる×つながる~美術と歴史の眼で見るまつど~」を戸定歴史館において開催し、地元の歴史や芸術文化への関心を高めてまいります。
市立博物館は現在、空調設備の改修工事のため休館しておりますが、この9月1日より再開する予定でございます。再開後は、特別資料展といたしまして考古分野と歴史分野の2つの異なる分野における環境と暮らしに関する資料展を同時に開催します。
「(仮)考古分野 先史松戸の適応戦略」は、近年の気候変動における環境への適応を考える上で参考となる、松戸に暮らした過去の人々の環境適応戦略を紹介し、「(仮)歴史分野 古文書からさぐる松戸の環境とくらし」は、江戸時代の古文書から、人々が環境をどのように利用し、また災害など非日常に対応したのかを紹介してまいります。
次に、戸定歴史館におきましては、徳川昭武の趣味の一つである旅行に着目した企画展「(仮)タイムスリップ・トラベル ー徳川昭武と旅行ー」を開催し、明治時代の日本各地の様子を、昭武が残した日記や写真を通して紹介いたします。
また、保存修理・耐震補強・バリアフリー化などを進めるため、設計に係る予備調査や耐震診断を実施してまいります。
目標7 教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
続きまして、目標7「教育デジタルトランスフォーメーションの推進」についてです。これも、「令和の日本型学校教育」を実現するための大切な施策となります。
今年度、児童生徒用のタブレット端末やデジタル教材を更新いたしましたが、個別最適な学びや協働的な学びを一体的に進められるよう授業におけるICTの活用事例やデジタルドリルの活用事例を周知するなど、各学校を支援してまいります。
こうした子供の学びを支えるためには、教職員のICT活用指導力の向上が重要でございます。授業設計や教材活用に関する研修を充実させてまいりたいと考えております。
次に、次世代型校務DX環境の構築につきましては、現在分離している校務系と学習系のネットワークの統合及び学校の通信ネットワークの環境改善を目指し、検討を進めてまいります。
目標8 指導体制・教育環境の整備
続きまして、目標8「指導体制・教育環境の整備」についてです。
教員の働き方改革につきましては、共同学校事務室を市内全域に設置し、事務職員の業務の効率化を図り学校運営参画を促進することで、学校全体の業務改善を図ります。また、改正「給特法」に示された教職員の「業務量管理・健康確保措置実施計画」を策定し、子供たちが適切な教育を受け続けられる環境を維持・向上させるため、教職員の働き方改革を推進してまいります。
これらの取組みにより、教職員の勤務時間外在校等時間が、1ヵ月あたり45時間以下となることを目指してまいります。
次に、学校の危機管理と非常時の学びを保障するための取組みについてです。
学校管理下における児童生徒の死亡事故ゼロを目指し、地域と連携し安全確保を徹底いたします。そのために、新たに、スクールガードへの指導助言等を行うスクールガード・リーダーを配置し、通学路を中心に、家庭・地域・関係機関との協働を促進していくことにより、事件・事故の未然防止を図ってまいります。
目標9 魅力ある教育施設の整備
最後に、目標9「魅力ある教育施設の整備」についてです。
これからの魅力ある学校のあり方検討については、まずは、本市全体の方向性を示す「(仮)松戸市新しい学校のあり方基本方針」の令和9年度での策定に向けて取り組んでまいります。これは、学校施設の老朽化対策や児童生徒数の今後の推移、松戸市における新たな街づくりなどを念頭に置き、松戸市全域における学校のあり方を検討することで、よりよい教育環境を整備するためのものでございます。 また、市内各地域に目を向けた計画の一つとして、本市の「常盤平地域のまちづくり方針」で示された「新たな教育・文化の構築」を踏まえ、URの団地再生にあわせ、「よりよい教育環境の整備」を前に進めるため、多くの皆さんにご意見を伺いながら「(仮)松戸市常盤平地区教育環境整備方針」の策定にも着手いたします。
以上が、令和8年度の主な教育施策となります。
おわりに
これからの時代、「学ぶ」という教育の根幹を成す意識や行動は、子供時代に限られるものではありません。人生のあらゆる場面で人を支え、社会と人を結び続けるものとなります。学校教育においては変化の激しい社会を生き抜く力を育み、社会教育・生涯学習においては一人ひとりが自分らしく学び続けられる環境を整えることが、これまで以上に重要となってまいります。
松戸市教育委員会は、学びの松戸モデル「松戸市教育振興基本計画」に基づき、「ことばを育み、人がつながる、学びの松戸」という基本理念のもと、対話を通じて互いを理解し、尊重し合える人づくりと環境づくりを進めてまいります。
ことばには、人と人を結び、世代や立場の違いを越えて社会を支える大きな力があります。その力を、学校、地域、そして生涯学習の場で育んでいきたいと考えています。
これらの施策を着実に進めるためには、教育委員会だけではなく、市長部局との緊密な連携が不可欠です。また、議会の皆様のご理解とご支援、そして市民の皆様お一人おひとりのご協力があってこそ、「ことばを育み 人がつながる 学びの松戸」が実現いたします。
未来を担う子供たち、そしてすべての市民が、学びを通して人生の豊かさとウェルビーイングを実感できる松戸市、誰もが「笑顔」になれる社会を目指し、今後も全力で取り組んでまいります。
どうぞ、引き続き、皆様のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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