広報まつど2025年9月15日号 金ケ作陣屋研究会会長・飯沼 誠さん
更新日:2025年9月15日
ふるさとの歴史を次の世代へ紡いでいく
金ケ作陣屋研究会会長 飯沼 誠さん
飯沼 誠さん
「約300年前の江戸時代、金ケ作地区には徳川幕府の陣屋があったんです」と朗らかに話すのは、今年86歳を迎えた市内在住の飯沼誠さん。幼児教育や国際交流の分野でも長年活躍する傍かたわら、生まれ育った地元の歴史を紐解く活動を続けてきました。
金ケ作陣屋は8代将軍・徳川吉宗の時代に、代官や役人が地域を治めるために築かれた幕府の役所です。馬の育成や競売、新田開発に力を注いだのが特徴で、将軍の御お鹿しし狩がりにも関わったといわれます。明治時代に入ると解体され、建物は残っていません。
幼稚園の運営に携わる中で、飯沼さんは「子どもたちの健やかな成長には、自分たちのまちの歴史や文化を伝え残すことも大切」と考え、志を同じくする仲間たちと歴史研究に乗り出します。「たくさんの方に調査・検証に協力いただき、金ケ作陣屋の正確な位置を突き止めることもできました」と笑顔で振り返ります。
御陣屋太鼓を叩く飯沼さん
陣屋の面影を今に伝えるのが、八坂神社に所蔵され、このたび市の指定文化財に指定された"御陣屋太鼓"。飯沼さんは、唯一江戸時代から残っているこの太鼓を文化遺産として保存・伝承する活動にも精力的で、顧問を務める「御陣屋太鼓を守る会」は、約40年間にわたり地域の行事やイベントで演奏を続けています。
「御陣屋太鼓は一般的な和太鼓よりもやや胴が短く、どっしりとした重低音の響きには心を和ませる力があります。演奏する子どもたちは太鼓を叩くだけでなく、神社の掃除や年中行事の手伝いを通して、日本の文化や地域の伝統も学んでいます」と活動の成果や魅力を語る飯沼さん。和太鼓が届ける力強い響きは、聴く人にふるさとへの想いを呼び起こすとともに、その演奏活動は青少年教育の一環にもなっています。
今後の目標について飯沼さんは「むかしの暮らしやまちのルーツを学べる場をつくり、社会教育の拠点にしたい。そして金ケ作陣屋のことをもっと広め、後世に残るようにしていきたいです」と語ります。
地域の人たちで力を合わせ、ふるさとの歴史と伝統文化を未来へと紡いでいくそのあゆみは、太鼓の響きとともにこれからも世代を超えて受け継がれていくことでしょう。
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