松戸から世界へ!今注目のBMXプロライダー
更新日:2022年3月22日
終わりがない それがBMX 「佐々木 元」×「莊司 ゆう」
2021年夏の東京、2022年冬の北京。2回のオリンピックが続けて開催され、ストリートカルチャーから発展した競技が、多くの注目を浴びることになりました。そのような中、次の2024年のパリ五輪で新種目採用への期待がますます高まるのが「BMX フラットランド」。舗装された平らな地面で、BMXをフィギュアスケートのようにくるくる操作してさまざまな技を繰り広げ、その難易度、独創性、華麗さを競う競技です。
パリ五輪を見据え、今から注目しておきたい2人のBMXプロライダーを「21世紀の森と広場」で発見。すでに海外で活躍する佐々木元選手と、次世代BMXライダーとして期待を集める莊司ゆう選手です。
師弟関係の2人はともに松戸市に拠点を置き、ときに師匠と教え子として、ときにライバルとして日々練習を重ねています。そんな2人はどのようにして出会い、今の実績を積み上げてきたのでしょうか。2人の素顔に迫ります。
練習に励む佐々木選手
――BMXを始めたきっかけは?
莊司:小学5年生の時にブレイクダンスをやってたのですが、その時にすでにBMXをやっていた友達を見ていて楽しそうだったので始めました。
佐々木:もともと何かにすごくのめり込むタイプ。高校までテニスでプロを目指していたんですが、ケガをして引退せざるを得ない状況になってしまったんです。そのあと、高校生として普通の生活を送っていたときに、使っていたママチャリが盗まれて(笑)そこで、買うならかっこいい自転車を買おう!と思って選んだものがたまたまBMXでした。当時インターネットでの情報収集が主流ではなくて、技をやりたくてもできなかったんです。それで、公園でやっている人を見つけたのですが、その人が日本に20人いるプロの1人だったんです。その人の技を見せてもらいながら練習をするようになりました。
技を魅せる佐々木選手
――BMXの魅力は?
莊司:誰もが乗る身近な乗り物である”自転車”で色々なことができることですね。あとはシンプルに技がかっこいいと思います。
佐々木:1人で好きなだけ練習できるところが自分に合っていて好きです。そしてBMXは終わりがないところが一番の魅力。技は何万種類もあって全部極めるには到底終わりがない上に、新しい技を作るとさらに上の技が思いついたりして。世界でも自分にしかできない技を人前で発表する瞬間が何よりも楽しみです。
技を磨く莊司選手
――「フラットランド」はどんな競技?
佐々木:とにかく奥が深い。スピン系と飛び技は、まったく別物。どちらかができればもう片方もできる、というわけではないんです。センスではなく、ハードな練習時間を乗り越えた人がうまくなると思います。
――フラットランドの魅力とは?
莊司:練習した分だけ技がうまくなるところや、技の種類が本当に豊富で、乗り方も人それぞれ違うところです。
佐々木:同じ技をやっても選手それぞれ特徴があります。同じフォームは決してなくその選手の生活や性格まで演技にでる。唯一無二の演技ができる、というところが最大の魅力だと思っています。
佐々木選手のインタビュー
――新しい技はどんな時に生まれるのか?
莊司:偶然思い浮かぶこともあります。ただ、思い浮かぶ前にたいてい頭の中にはすでにイメージがありますね。
佐々木:今ある技をさらに難しくするパターン、全く新しい技を作るパターンの2パターンがあります。演技で足りてないと思う方をその年に選んで大会に臨みます。全く新しいものを作るのは結構大変で、なんとなく、普段の生活や技をやっている時に、「もしかしたらできるかも」というひらめきから試行錯誤して、ようやく(技の完成に)たどり着く。それがきっかけで2011年に世界一を獲れました。2008年にオリジナル技の「元スピン」と出会ったときは、もう震えが止まらなかったです。
談笑する2人
――オリジナル技は何種類ある?
佐々木:300種類ぐらいあると思います。自分は前輪が得意なんですが、前輪を極めると、最終的に自分の技にたどり着く選手が多いと言われています。たくさん、技をつくってきた自信はありますよ。
――世界から見て日本のレベルは?
佐々木:BMXは世界的にみても日本がダントツに強い。オリンピック競技になったら国内争いが激しくなると思います。本当に練習量が必要なスポーツなので、真面目な日本人には向いているのだと思います。
巡り合わせでつながってきた2人のBMX人生
BMXの魅力を語る2人
――お2人の出会いは?
莊司:最初の半年は、近くの公園で練習していたのですが、BMXをやっていた友達がここ(21世紀の森と広場)で練習していて。そこですごく集中している人がいて「すごいな」と思っていたら、それが元さんでした。かっこいいな、と思いました。
佐々木:出会いから3年ぐらいたって。BMXは親に褒めてもらいたいから始める子供が多かったんですよね。彼も最初はそういうタイプだった。それで、ディケイドとよばれる派手な技ばかりやっていたんです。でも派手な技ばかりやっていても一生うまくはならない。見かねて声をかけて…、そこから教えるようになりました。
BMXで魅せる佐々木選手
――プロになった経緯は?
佐々木:大会に出場するようになった後、一時期、腰のヘルニアで出られなくなりました。でもその後もずっと練習していたんです。信じられないぐらい手がボロボロにもなりました。アマチュアの選手権で1位になれば、プロになれるルールだったのですが、それで初めて3位が獲れて「もう少し!」ってところで腰のヘルニアが再発したんです。それ以来、練習しては腰を痛めてで、そのような状態が10カ月続きました。運動ができない状態の中、1年後の全日本選手権にたまたま遊び感覚で行ったら、友達に“出てみなよ”と言われて。それで出場したら、優勝しちゃって。ラッキーパンチが決まって、プロになった。そうしたら、大会にいた関係者に「それだけ運を味方にできるのだったら、しっかり病院に行って治療してプロになれ」と言われて。今のトレーナーはその時出会った人ですが、その人に出会わなければ今がなかった。BMXを始めたきっかけと同じで、巡り合わせでここにいると思っています。
――莊司さんとも巡り合わせですね。莊司さんから見て佐々木選手はどんな方ですか?
莊司:BMXがすごく大好きな人!そしてめちゃくちゃストイック。努力家で自分に嘘がない人。厳しいけど愛がある人です。
2人が拠点とする松戸市はBMXライダーの聖地だった
莊司さんのパフォーマンス
――松戸出身の莊司さんにとって、松戸でよかった点は?
莊司:BMXの練習ができる環境があるところです。他の地域だと練習を認められていないところが多いのですが、元さんをはじめとする先輩たちが、乗れるように努力してきてくれたおかげだと思っています。
――佐々木さんが、松戸に住むことになったきっかけは?
佐々木:もともと別のエリアに住んでいて、震災の影響で引っ越しを余儀なくされてしまって。それで拠点を移さなければならなくなったのですが、もともと自転車をやり始めた頃から、松戸の「21世紀の森と広場」が ”BMXの聖地” だと知っていて通ってたので、もう真っ先に決めました(笑)
――BMXライダーにとって「21世紀の森と広場」は特別な場所?
佐々木:そうですね。練習環境は世界的に見てもトップ10に入るぐらい良い場所だと思います。自分たちが真剣に練習しているのを街の人も知っていて、温かい目でいつも見てくれています。「頑張ってね」と声をかけてくれて、本当に居心地が良いです。あとは、木に囲まれていて風の影響を受けにくいので、天候に左右されることなく練習ができて、歩行者が少ないのも良いところです。
――これからBMXを始めるストリートキッズにアドバイスは?
佐々木:「かっこよく自転車に乗ろう!」ということを伝えたいです。まずは乗る楽しさが一番。技をやるよりも「走りたい」という気持ちが大事。「(ペダルを)漕いでいて楽しい」「走っていて楽しい」と感じていてほしいと思います。実は、今も何人かに教えていますが、挨拶やマナーにはとても厳しくしています。海外と比べて、まだまだ日本には練習環境が整っていないという点があって、練習場所を確保していくためにも挨拶やマナーがとても大事。スケボーもBMXもアクションスポーツをやっているのであれば、挨拶もしっかりやろう、と教えています。挨拶がきちんとできて、その上で楽しくできればよいと思います。そういう精神が広がって地域のコミュニティができたらいいなと思っています。
――お休みの日は何をしている?
莊司:休みはあんまりないです(笑)テラスモールに行ってショッピングしたりしますが、ケガ以外は基本的にほぼ毎日練習しています。
佐々木:どの競技よりも練習量が大事なので、休みの日はほとんどなくて。半日休みを作るとしたら、子どもと遊んだり、家族と過ごす時間を大事にしています。
佐々木選手からのメッセージ
――今後の目標を教えていただけますか?
莊司:今ジャパンカップでランク5位なので、元さんと同じ表彰台に上がりたいと思っています。
佐々木:4月22日・23日・24日に千葉の幕張で「X Games Chiba 2022」という大きな大会があって、フラットランドは19年ぶりに復活します。競技に出られるのは招待選手のみとなっていますが、そこに出場することと、勝つことが直近の大きな目標です。
――2年後には2人そろってパリ五輪での活躍を期待しています
莊司:はい!行きたいですね。
佐々木:そうですね。莊司を弟子として応援してます。ただ、ライバルとしても見ています(笑)
――最後にメッセージをお願いします
莊司:いつも松戸の「21世紀の森と広場」で練習しています。集中して練習してますが、もしよろしければ声をかけてください。
佐々木:皆さんとのふれあいが活力になりますので、街中で見かけたらぜひ声をかけてくれたら嬉しいです。
プロフィール
佐々木 元
佐々木 元(ささき もと)
1985年5月生まれ 36歳。千葉県松戸市在住。BMXフラットランドのプロライダー。鎌ケ谷巧業株式会社所属。
2010年、2011年にはBMX界で最も権威のあるアワード “NORA CUP” をアジア人初の2年連続で受賞するなど、世界を代表するライダー。
2019年ワールドカップ第3戦で優勝。2021年6月にフランスで開催された世界選手権では準優勝。
莊司 ゆう
莊司 ゆう(しょうじ ゆう)
2002年1月生まれ 20歳。千葉県松戸市在住。BMX フラットランドのプロライダー。
2021年に開催された JAPAN CUP エリートクラス 5位、Chimera A-side プロクラス 3位。2020東京オリンピック閉会式に出演。
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