〔提言〕青少年の豊かな心を育てる社会教育の推進について
-学校週5日制の実施にむけて-
| 第26期松戸市社会教育委員 | |||||
| 委員長 | 山田英夫 | 副委員長 | 瀧田泰子 | 委員 | 深澤信 |
| 委員 | 江野澤浩子 | 委員 | 川並弘純 | 委員 | 河野正幸 |
| 委員 | 蓮田光雄 | 委員 | 深山能一 | 委員 | 渥美省一 |
| 委員 | 木村敬子 | ||||
はじめに
平成14年度から「学校週5日制」が完全実施されます。この趣旨は、ゆとりのなかで、子ども達の豊かな心やたくましさを育てようとするものです。そのために、家庭や地域社会でも様々な生活体験や自然体験の機会を得ることができる場を作り出す必要があります。
市においても、青少年の学校外の活動機会を一層拡充、整備し、家庭と地域の教育力を高め豊かな心を育てる環境の整備を急がなければなりません。そこで、目指すべき方向性について審議してきました。この過程では、「家庭教育の充実に向けた、学習機会の提供の在り方」「社会教育団体が蓄積した豊かな知識や経験、また人材を地域の教育力として生かしていく方策」「家庭や地域との連携を進める講座室の運営の在り方」の3点に注意して、協議をおこなうことを求められました。
かつて学齢期にある青少年については、その生活の大部分を学校で過ごし、余暇時間が少なく、社会教育の場への参加は限られた感がありました。けれども完全学校週5日制実施後は年間の休日は140日を超えます。これは1年の40%近くの時間となります。このような状況から学校教育とは質の違う社会教育の場に是非参加して欲しいものです。
また、平成10年の労働省の調査によれば何らかの形で週休2日制になっている労働者の割合は95.6%であり、うち完全週休2日制は59.2%を占めます。市民全体の生活時間にも、ゆとりが生まれていることがうかがえます。親も子もこうしたゆとりの時間をどう過ごして行くのか問われるところです。
今日指摘される様々な青少年をめぐる問題は、同時に大人の問題でもあると言えます。次代を担う青少年の育成について、地域の大人が真剣に考え、社会全体で、活動できる場をつくり出し提供していく体制づくりを早急に進めていくことが必要です。子ども達と共に成長することによろこびを見出せる大人でありたいと思うと同時に、そんな社会の構築を目指さなければならないと思います。
第1章 青少年の現状と課題
「平成12年度教育統計資料」によると市内の小・中学生は約37,000人で、高校生は約12,000人です。この多くの青少年とそれを取り巻く実態について正確に把握することは大変に難しいことです。私たちが、日頃の活動のなかで体験している地域や学校の現状と、教育研究所がおこなった「学校週5日制に関する意識調査」「児童生徒の生活実態に関する実態調査」を参考にして審議を進めました。
現在の青少年は物質的に豊かな社会の中で暮らしています。スポーツを楽しみパソコンや携帯電話などの情報機器を自在に操り、ギターやピアノなど楽器を奏でバンドを組み、ボランティア活動にも積極的に参加している能動的な姿があります。彼らの興味関心、活動範囲は大きな広がりを見せています。中学生で1割、高等学校生では7割を超える青少年が市外で学業を修めていることなども彼らの世界を広げている要因かと思われます。そうした成果は、音楽や演劇ダンスなどの文化活動発表会や青少年フェスティバルなどで市民に披露される機会も増えています。
本市の青少年教育は青少年会館を中心に「学習、文化・スポーツ活動を通して、異年齢集団が触れ合いながら感性を磨き自立心を養う」ことを目的に展開されています。
年間を通して「他者を思いやる心を育て、美しい物に感動する感性や環境保護の大切さを学び、地域で活動することにより高齢者や障害者を理解し共に生きていく豊かな心を育て、更に自発的な活動へと発展させていく。」ことを目指して学習講座が開かれ延べ3000人を超える青少年が参加しています。
一方で心配されるいくつかの課題も指摘されました。まず家庭が青少年の心の豊かさを支える場、生み出す場になっているかということです。核家族化、少子化のなかで我が子だけに目がいく親と、親に相談しても否定的な答えしか返ってこないとして相談しない子ども達と、それぞれの孤立が進み子ども達は家庭内でコミュニケーションが十分できなくなっているのではないでしょうか。
また、青少年のなかには人と関わる力が弱く、自己中心的で、社会のなかで人との関係を取り結ぶことが不得意になっている者も見られるようです。なぜそうなっているか考えると大人との出会いが少ないというのが原因の一つと考えられます。彼らと接するのは親や教師に限られてしまって、近所の人に誉められたり叱られたりという経験さえ無い子ども達が多い現状があります。
青少年が自分たちの知恵を生かしイニシアティブを執れる活動の場も少なく、大人の企画の中で動くことが多く、それに慣れてしまっているようにもみえます。自分で課題を見つけ、学び、考え、問題を解決して行く力をつけるために、より多くの主体的な活動の場が必要です。
大人社会のありさまや社会全体の価値観の揺らぎなどが、青少年の意識や行動に少なからず影響を及ぼしていることは紛れも無い事実です。子ども達の問題は実は大人達の問題です。多くの子ども達に自分たちが住んでいる地域を好きになって貰い、共にまちづくりをしていくためにも、創意工夫を凝らして、地域で新たな体験をおこなう場と機会を提供していくことが必要です。
第2章豊かな心を育てる家庭教育のために
1、家庭教育に期待するもの
豊かな心の育成のためには、幼児期からの家庭教育を大切に考えなけれ ばなりません。家庭教育は教育の出発点であり子どもの教育に関する最終的な責任は家庭にあります。基本的な生活習慣・生活能力・豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断など基本的な倫理観、社会的なマナー、自制心や自立心など[生きる力]の基礎的な資質や能力を培う家庭教育の充実を支援していく必要があります。無論、社会教育だけではできることではありません。他の様々な施策と協力しておこなわれるべきものでしょう。平成7年の国勢調査によれば市内の親族世帯124,472のうち、核家族は111,328世帯89.4%を占め、いわゆる三世代家族は7,389世帯5.9%に過ぎません。かつて三世代家族などの中で子どもたちが身に付けた伝統文化や親子・きょうだいの関係つくりも、親が子どもと真剣に向き合い、語り合い、時には叱ることなどで学ばせていかなければなりません。家庭のあり方そのものが変わってきているのですから、子どもをどのような人間に育てたいのか、父親、母親としての役割をそれぞれがどう果たしていくか、両性で子育てをしていくという理念に対する合意が必要です。その中で親も育っていき愛情が感じられ、子ども達が安心して暮らせる家庭になっていくのです。
家族の中でコミュニケーションを増やすように求められても、急に話しができるわけではありません。週休2日制で家庭に居る時間が増えた父親が家事に携わるなかでの親子の会話とか、地域社会の役割をやっていく中での会話、そういうことが手がかりになります。子どもの学力の根底に必要なのは精密な言語能力で、そのことが貧弱なまま育っても高い学力は育ちにくいのです。家庭の会話が豊かな子どもには豊かな心が育つのです。三世代家族に代わって、近所の付き合いを大切にする、親の人間関係を広げていくという生き方を見せていくことが大切だと思います。開かれた家族を意識的に創出していく必要があります。
≪具体化するための例≫
【家庭の日の活用】第3日曜日の「家庭の日」はまだ十分市民に知られていません。市報や教育委員会の発行する広報紙に記載するなどして周知を図り、あわせて家族揃って参加できる活動の場をつくるなどの条件整備もおこなう。
【家族同士のあいさつ】家庭の中での父、母と子の関わりが希薄化しています。朝の「おはよう」「行ってきます。」の一言をきっかけに夫婦、親子の会話を増やしていく呼び掛けをする。
2、家庭教育学級について
各家庭の親が抱えている問題や悩みというのは多種多様であろうと考えられます。全学級生のうち学習会の参加者が必ずしも多くないという現実を踏まえ、徹底した需用調査をおこなうなどして、市民のニーズに合っているのか、それに応えているのか、問題意識を持って見直す必要があります。 従来も様々な工夫をしているようですが、PTA行事や学校行事と組み合わせて実施したり、学習を深めるためにネットワークの構築や継続的で自主的な活動へと発展させていくための支援をさらに進める必要があるでしょう。母親を中心とした学習だけでなく、休みになる土曜、日曜を生かして、学校と連携しながら子どもや父親も参加できるような家庭教育学級を展開していくことも必要であろうと考えられます。その際、野外活動は大変有効な手段です。
市内では全小学校で家庭教育学級が開かれ成果をあげてきましたが、家庭のあり方が、大きく変わって多様化している状況ですから、現在の方法を全面的に改善して別の制度を構築することを考えても良いのではないかと思われます。
《具体化するための例》
【特色ある家庭教育学級】市内を10~11程度の地区に分けて特色ある家庭教育学級を開設する。地域の人々の力をかりて、他に無い特色ある講座を開き、学ぶ市民の側が自らのニーズに合わせて学習内容、回数、場所を自由に選んで参加することができる制度を取り入れる。
学級主事はまだ一部の学校ではあるが、校務分掌に設けられている「生涯学習担当」に委嘱し、学校教育と社会教育の緊密な連携のもとで発展を図っていく方法もある。また学級生は学習意欲が旺盛で創意工夫しながら学級を積極的に運営しているので、自主的な運営に任せる方法をとることも可能であろうし、PTAの成人教育などの部門と連携した運営も可能であろう。
3、新たな学習機会の創出について
小、中学生の間の家庭教育も大切ですが、就学前の教育も大切にしなければなりません。健康診断の場、幼稚園・保育所などでの学習機会の提供をおこなう必要もあるのではないかとも考えられます。家庭教育指導員によっておこなわれている電話相談を受けるだけではサービスとして十分でありません。市の側から出かけて行って講座や相談会を開くようなことを考えてもいいのではないかと思われます。現在の形に拘ることなく、各発達段階での家庭教育の場を重く見て、市民ニーズに合った事業ができるように工夫して欲しいものです。
≪具体化するための例≫
【出前講座】現在、親たちは様々な知識は持っていてもそれを実行することができない場合が多い。現実の子育てはマニュアルどおりにいかない事が多いので様々な悩みが生じて不安になる。知識と行動を結び付けるためには試行錯誤や失敗もある。小さなサークルや健康診断の場などへ、子育て経験のあるボランティアなどを派遣してワンポイントアドバイスのような形で学習機会を設定するなどサービスを広げる。
【就学前健康診断の機会を活用した家庭教育】小学校に入学する直前は、親も何くれとなく心配したり、不安な気持ちになることもある。子ども達が健康診断を受けている待ち時間を利用して、ビデオを見たり先輩の話を聞く機会を設ける。
第3章豊かな心を育てる地域社会のために
1、地域社会に期待するもの
家族でも教師でもないが地域の大人として、子ども達の教育や土曜・日曜の活動に誰もが手助けすることができるという認識を広く市民が持てるようにしていくことが重要です。子どもは地域社会で育まれていくもので、子育ての終った大人達も特別なにかをするということではなくても、声をかけるとか見守っていくということが出来ます。「おはよう」の一声から子ども達とのコミュニケーションが生まれて来るはずです。 また、地域のなかには様々な教育資源があり、埋もれている人材があります。例えば市が認定している社会教育団体は千を超えています。このなかにも多くの青少年活動を指導できる人材があると思われます。それらを掘り起こし情報として広く提供できるよう人材データバンクを構築し、地域の大人達によるボランティア活動を盛んにしていくことで多様化したニーズに応え青少年の豊かな心を育てる様々な活動が可能になるでしょう。
≪具体化するための例≫
【地域人材データバンクの構築】社会教育が中心となって、学校、町内会、社会福祉協議会などの協力を得ながら、ボランティアを募り、文化、芸術、教育などの指導者リストをつくり広く子ども達の活動に提供していく。高校、大学等と連携して学生ボランティアが小中学生のサポートができる体制や、小、中、高等学校の先生や企業のエキスパートなど専門的知識を持った人の地域での活動環境もつくっていく。
2、子ども会について
子ども会は地域を基盤とする異年齢の集団活動で、小学生の約3割が加入しています。地域を基盤とした住民のつながりが希薄化している中で、子ども達も仲間とのつながりを上手に持てなくなっているようです。従来の子ども会を支えていた指導者、育成者の確保も難しくなっている様子がうかがえます。 こうした環境を打開して子ども達自身のニーズに基づいた魅力ある子ども会活動を育てていくには、地域の他の団体との連携を進め多様な活動を生み出すことや子ども自身が企画運営に当たることが必要であると考えられます。
また父親の運営への参加が促されれば、子どもと共に活動できる喜びを見出す契機になるはずですし、新しい活動を生み出す原動力になっていきます。
子ども会以外の青少年団体にも子ども会同様の支援が行なわれることも必要です。
《具体化するための例》
【子どもオフイス】おとなのお膳立ての中で行動する場合が多くなっているので、子ども自身の企画による新しい活動の創出のため子ども達によるシンクタンクを立ち上げる。子ども達がアイデアを出し得意な情報機器などを使って賛同者やボランティアを募り活動していく。こんなことやってみたい、あんなことやって見たいという思いつきを形にしていく過程を子ども自身がおこなうことで、生活体験、社会体験ができ達成感や時には挫折を味わうことになる。創意工夫で特色あるプログラムを開発して実行していく。また、子ども会OB(中学生・高校生)にリーダーとして活躍してもらう。
3、PTAについて
多くのPTAでは、基本的な役割や活動についての論議や合意が無いまま、学校後援会的役割を引きずっていて、行事中心の活動になっているように見えます。これからのPTAのあり方として、生涯学習の場として会員自身が自己啓発を図り、子どもを育てることに積極的役割を果たすことも考えていくことが大切です。PTAが中心になって地域の組織や、ボランティアと協力して学校施設を利用して子どもを対象に土曜、日曜にスポーツ、文化活動を主催することも考えられます。PTAには大きな可能性が秘められていますが、現状とのギャップもあると思われますので、当面モデル事業などで問題点を整理してみる必要があります。
≪具体化するための例≫
【PTA立ウイークエンドクラブ・おやじの会】父親、母親が共同して子どもを育てていくなかでは、父親や仕事をしている母親、先生にもPTAへの参加を促したい。そのためには活動時間の見直しなども必要になる。夜間や週末も活動するPTAが核になって子どものためのクラブ活動を実施する。父親の得意な活動を廻りに広めていく機会などを設け、週末のスポーツ、文化活動の指導などに発展させて活動を広げていく。
4、社会教育施設について
地域というと、小学校単位などの狭い範囲を考えますが、青少年の活動範囲は広いので市全体を一つの地域と考えた方が良いでしょう。学校を始めとして公民館、図書館、博物館、森のホールなどを含めていろいろな性格を持った施設が一体となって、様々な違った体験ができる機会を青少年のために創出して行くという姿勢が重要です。青少年が、身近なところで自分の得意なことや新しいことに挑戦してみたいと思った時に活動できる場所になっているか、仲間と共に活動してみたいと思った時利用し易い場所になっているか点検してみてください。そういう姿勢が社会教育施設に無いと子どもたちが使い易いところにはなりません。子どもにとって使いやすい施設は、大人にとっても同様です。
《具体化するための例》
【青年活動サポートセンターの発足】青少年の情報発信の拠点、活動交流の拠点として青少年自身が運営する場を設ける。
第4章 学校、家庭、地域社会の連携
1、連携への期待
家庭教育は、全ての教育の出発点であり、社会で生活していく上で大切なことをきちんと身につけさせる役割があります。学校教育には家庭、地域社会での活動や体験と併せて一人一人が豊かなものの見方や考え方ができるようになるための基礎を作っていく役割があります。地域社会における教育には、子ども達の成長を温かく見守りつつ、時には厳しく鍛える場ともなりながら、育んでいく役割があります。家庭だけでも、学校だけでも、子ども達を健やかに育てることはできません。 現在、相互の連携が十分かというと多少の疑問もあります。地区別に青少年健全育成協議会等がこの役割を担っていますが、市も積極的に関わって行く必要があります。さらに言えば「地域で子どもを育てる会」を学校が発信源となって地域の人々の力を結集して立ち上げることも検討に値すると考えられます。
また連携の出発点として情報の共有は不可欠です。平成4年に月1回土曜休業が始まった時に、教育研究所が中心となって発行した「マイチャレンジ」は、市内の歴史、公共施設等を紹介した情報誌です。新しくできた休みを、目的を持って過ごしてもらいたい。どう過ごしたら良いか迷った時に参考にして欲しいということで発行され利用されました。発行から9年が経っていますので、新しい情報を加えて改訂版の発行を考えるとか、インターネットを利用した情報提供システムを立ち上げる必要があります。「第1章青少年の現状と課題」の中で触れたように、彼らの活動範囲は相当に広いと考えられますので地域の情報を手がかりに、さらに広い範囲の情報やより専門的な情報へのアクセスに発展させていけるようなシステムを構築していくことが大事でしょう。
《具体化するための例》
【地域で子どもを育てる会】学校ごとに地域の様々な組織・団体(自治会、町会、民生委員、青少年相談員、スポーツ指導員、各種スポーツクラブリーダー、子ども育成会、老人会、交通安全指導員、PTA、消防団・・・)や地域で子どもの育成に関心を持っている人達の力を広く集めて「仮称・地域で子どもを育てる会」を結成する。そして子ども達のための各種文化活動、スポーツクラブを設け、学校施設を利用して活動できるようにする。組織の在り方や名称は地域で実状にあったものを考えて実現していって欲しい。
【生涯学習担当の校務分掌への位置付け】社会教育の側から様々な機会を利用して、小中学校に地域の人々を対象に入れた生涯学習担当を設けることを働きかける。学校は施設だけでなく地域の人たちが学ぶための機能も合わせて持っている。社会教育行政はこの担当と連携して、子ども達の放課後や週末の学習をコーディネイトしていく。
【情報センター・交流ひろばの発足】イベントやボランティアの活動、身近な体験学習の場や野外活動の場等のあらゆる情報を提供する情報センターと、活動の交流ができる交流ひろばを一体でつくることで連携がすすむ。
2、学校施設の開放
青少年の活動を活発にしようとするとまず、活動場所の確保に困ります。学校には、普通教室だけでなく音楽室、家庭科室、図書室などの特別教室もあり、地域の人々が指導者となればそこで子ども達が活動をすることが可能です。「第3章の1地域社会に期待するもの」でも述べましたように地域の大人として子ども達の活動の手助けをしたいと潜在的に考えている人たちに、人材バンクへの登録をお願いすれば多くの指導者が得られるはずです。開放の前提として解決しなければならない管理上の問題は多くあるとは思いますが、学校側からも歩み寄りが欲しいと思います。青少年の活動に限らず、地域で何かしたいと考えている市民に、学校の施設を提供していくという基本的な方向性を持って検討し、「年間を通してこの程度施設提供ができます。」というような事を学校からPRして欲しいと思います。自分達の子どもが学校に通わなくなると、学校は行き難いところになります。それでは地域との連携はスタートできません。社会は大きく生涯学習の方向に向かっているのですから学校の側も地域と連携して青少年を育てるという視点を持ち地域社会に積極的に施設を開放して欲しいものです。
こうした市民と学校のニーズを捉え、総合的な施策にしていくのは教育委員会の役割となります。「学校も市民の財産の一つ」として、その施設の使い方について論議してもいいのではないでしょうか。少なくとも、現在、学校施設開放運営委員会の会長の66%を学校長が務めている現状について検討し、地域にこの会長職を移していくための筋道を明らかにしていくことなどが、必要ではないでしょうか。市民の生涯学習の場として学校の一部を開放する時には、完全に分離することを目指すのではなく、柔軟性を持って必要な時には相互に使えるように有効利用を考えて設計が行なわれる必要性があります。
≪具体化するための例≫
【特別教室の開放】平日、夜間、週末をとおして市民が利用できるように必要な規則などを整備する。開放しても使い手が無い場合もあるかも知れない。使える仕組み、方法を考えていかなければならないが、社会教育の側からの積極的な働きかけが必要であろう。
【地域ふれあいセンター】現在講座室として開放されている普通教室に情報機器などを導入して高度化しモデル事業を実施する。学校が地域の協力を得ておこなう高齢者との交流会や総合学習、インターンシップなどの活動の調整をおこなうセンター機能を備える。学校、家庭、地域の連携を進める上で常時開かれた拠点があることは重要な要素と考えられる。学校開放運営委員会が主体となって学校の生涯学習の担当と協力して運営にあたる。
3、部活動と社会体育の相互の連携について
「学校週5日制」実施後、心配されることの一つに体力の低下があげられています。部活動で運動し体力を付ける子と、運動をしない子の間で二極化が進んでしまう可能性があります。生きる力の土台となる「健康と体力」を養い人間的向上を図る上で部活動は大きな役割をもっています。現在教員数の減少や高齢化などによって指導者が不足し、スポーツ指導者バンクから講師派遣を受けて活動している部活動もあります。今後は、部活動と社会体育の相互連携を進め、部活動をしていない子どもたちも気軽に参加し体力を付け楽しむことのできるスポーツの場を増やしていく必要が特に迫られています。土曜、日曜の学校における部活動を原則的に全て止めて家庭に帰してはどうかという意見もありました。子どもの心を育てるのに土曜、日曜まで部活動をやらなければ育たないのかどうか、義務教育の段階で何が大切なのか、何が求められているのかを考え、そこから出発してみると、部活動は無論効果を上げているのですがその反面も確かにあるようです。毎日を学校の中だけで過ごすのでは無く校外を含めた多様な活動に参加していくことが望ましいと考えられます。しかし、そこに至るまでの道のりを見てみると指導者の問題、場所の問題等が有り、子どもや保護者が選ぶとしたら現状では部活動になるということなのでしょう。
いずれ学校施設を学校だけが使うという考え方が根本から変わって、地域の施設としてその一部分、一定時間を学校が使うという考え方が定着するようになれば、部活動と社会体育の連携もスムーズにいき、5時以降の活動は社会体育にバトンタッチ、土曜、日曜の活動は学校施設を使っているけれども社会体育ということがスムーズに受け入れられるようになると考えられます。ヨーロッパでみられるような地域に密着したクラブチームを育てていくこともアイデア次第ではないでしょうか。現状を踏まえた上で知恵を出し合って考えていきたいものです。
≪具体化するための例≫
【地域でのクラブチームの育成】スポーツも多様化が進んでいます。学校ごとに分担して様々な種目に取り組み、特色を持たせ所属する生徒に限定せず参加を可能にしてスポーツに親しむ機会を増やして行く。
4、新たなネットワークの構築
各章で述べてきたことは相互に関連しています。≪具体化するための例≫として挙げた事業もそれぞれに機能しますが、全体を結びつけてひとつの体系の中に整理することが出来れば更に役立つものになっていきます。社会教育、学校教育という枠を越えて、『青少年支援ネットワーク』のような事業にまとめていくことができれば、身近な関心のあるところからこのネットにアクセスした青少年が、やがて様々な物にも目を向けていくことができる有意義なものになります。そのためには社会教育がコーディネーターとしてリーダーシップを発揮していかなければ実現しません。
《具体化するための例》
【総合的施策の推進・青少年支援ネットワークシステム】 青少年育成の基本理念のもとに〈地域人材データバンク〉〈子どもオフィス〉〈おやじの会〉〈青年活動サポートセンター〉〈情報センター〉〈交流ひろば〉〈地域ふれあいセンター〉〈クラブチーム〉などの機能を相互に結びつけ気軽に、生活体験、職業体験、自然体験の場に参加し、豊かな心や逞しさを育てていくことが出来る環境を整える。
おわりに
「完全学校週5日制」の実施を目前にして、学校は勿論、様々な機関が研究協議を進めています。私たちも限られた時間でしたが、社会教育の果たすべき役割について協議して来ました。今、必要なことの一つに、青少年行政を推進していく中心となる組織の発足があります。青少年に関わる施策は、教育委員会をはじめとして首長部局の様々なセクションでも進められています。また、行政だけで行うのではなく、市民の力を借りて実行に移されるものもあります。これらを効果的に推進していくためには、各施策を体系的に整理し、市民の目に見える分かりやすい形にして提示をしていく必要があります。しかもそれは大人だけでなく、青少年に直接アピ-ルすることも重要です。その意味で、子ども会活動の支援やジュニアリーダーの養成などで、子ども達に良く知られた「こども課」が包括的で総括的な青少年に関する施策全体を企画立案し、青少年会館や学校教育と相互に連携して、政策を推進していく中心となることが望ましいと考えられます。
ところで青少年の育つ『私たちのまち』には、豊かな文化が息づいていて欲しいものです。そのためにも、社会教育の施策の根本に、豊かな感性を育み、心に潤いとゆとりをもたらす、優れた芸術や文化に触れたり、参加したり、そしてさらには新しい文化の創造者となることを支援する施策が是非とも必要です。青少年に焦点を合わせた「文化のマスタープラン」をつくることも検討に値すると思います。
幾つかの新しい仕組み、施策に向けた提言をおこないました。この実現のためには、現在の施策、事業を点検し、見直すことも必要です。青少年の豊かな心を育てる地域社会の実現のために、本提言の趣旨をご理解いただき、関係機関の理解とご協力をいただきながら、施策の具体化に努力されますよう切に望みます。





