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松戸市の部活動を支える名顧問たち

更新日:2022年9月20日

近年、松戸市内の学校の文化系・運動系の部活動が、全国レベルで著しい活躍を見せています。
そこで今回は、部活動を指導している顧問の先生にフォーカスを当て、指導方法や成功の秘訣などの面から松戸市の部活動が躍進している理由を探ります。

※インタビュー等の内容は2022年8月時点のものです。

須藤 卓眞(たくま)先生(松戸市立小金中学校・吹奏楽部 顧問)

松戸市の吹奏楽部の躍進を牽引する名指導者

「なかなか信じてもらえないのですが、これまで一度も“目指せ全国!”とか“こんな演奏では金賞はとれない!"と発破をかけたことはないんです」と語る須藤卓眞先生は、これまで多くの学校の吹奏楽部の顧問として輝かしい成績を収めてきました。その指導の秘訣に迫りました。

拍手喝采の感動がプレイヤーになるきっかけ

知り合いのピアノの発表会で目の当たりにした会場からの“拍手喝采”に感動した須藤先生は「ピアノを習わせてほしい」と親に懇願し、小学1年からピアノを習い始めました。レッスンに通う中で先生から複数の楽器に触れることを薦められた須藤先生は、クラリネットの習得を中学生からスタート。しかし、中学校には吹奏楽部がなく、高校にはあったものの入部せず、吹奏楽部歴がないまま音楽大学に進学します。
その後、当時住んでいた大阪の楽団への入団試験を受けたものの、東京からの受験者が合格。「それならば、自分が東京に乗り込んで有名になってやる」と意気込んで上京し、音楽の勉強に励みました。その一方で、生活のためには働かなければなりません。須藤先生は、産休に入った先生の補助の非常勤講師として、小学校で音楽の教鞭をとり始めました。

自分の経験を活かせる環境との出会い

初めて松戸市に赴任したのは、非常勤講師として2校目となる松戸市立中部小学校でした。須藤先生が驚いたのは、中部小に吹奏楽部があったことでした。小学生に吹奏楽ができるのだろうか。そんな疑問は、子どもたちが楽しそうに演奏している様子を見てすぐに吹き飛びました。「ちょうどプロの演奏家としての道を断念した頃でした。そんな時に、自分の学んできたことを吹奏楽の指導という形で、子どもたちに還元できると気づいた」ことが、須藤先生が吹奏楽部の指導にのめり込むきっかけとなりました。

次の松戸市立北部小学校での非常勤講師を経て、教員採用試験に合格した須藤先生は、正式に教員としての道を歩み始めます。松戸市立和名ケ谷中学校では2度の全日本吹奏楽コンクール(全国大会)への出場を果たし、続く柏市立酒井根中学校では3年連続の全国大会・金賞を受賞、さらには松戸市立第四中学校では8度もの全国大会出場に導くなど、生徒たちとともに輝かしい結果を残しています。

相互の信頼から生まれるよい音楽を、聴いてくれる人のために届ける

「“一音を長く吹こう”という先生の指示で、曲が綺麗につながるようになった(副部長・菊岡舞央さん)」などの技術面もさることながら、須藤先生が部活動の顧問を務めるにあたり大切にしているのは「理解と納得」だと言います。生徒に何かを押しつけるのではなく、言葉や指導の意図を理解して納得してもらえてこそ本当の行動になると意識しているそうです。「私が生徒を理解することが前提です。相互に理解することで信頼が生まれ、信頼がよい音楽を生み出すんです(須藤先生)。」

また、相互の信頼が必要なのは、顧問と生徒の関係のみに留まりません。同じ部員同士、先輩と後輩、異なるパート同士などでも、信頼が求められます。「演奏がうまくいかない子に対してどのように全員でフォローするかとか、他の楽器パートがうまくいかないのはなぜか一緒に考えるとか、信頼はそういった関わり方から生まれます。信頼し合って、仲が良くなければ、良い音楽は作り上げられないです(須藤先生)。」

今年、その信頼がひとつの実を結びました。千葉県吹奏楽コンクール 中学校の部A部門(大編成)を突破し、昨年出場できなかった東関東吹奏楽コンクール(9月4日に宇都宮で開催)へ駒を進め、金賞を獲得できたのです。この結果は、「須藤先生がいつも私たちに話してくれる目標は、“聴いてくれる人のために演奏すること”(部長・増田桃子さん)」という思いが観客席に届いたからなのかもしれません。

仲良く切磋琢磨する、松戸市の吹奏楽部

最後に、なぜ松戸市内の中学校の吹奏楽部は強豪校が多いのかと、須藤先生に質問してみました。すると、先生は一言「仲が良いから」と答えてくれました。
「松戸市そして千葉県の吹奏楽部の先生たちは熱心でありながら、マインドがオープン。一緒に練習したり、見学し合ったりしています。やはりどんな場面でも仲が良いというのは大事なことなんです。」健全な切磋琢磨が続いている松戸市の吹奏楽部は、これからも素敵な音楽を奏で続けるでしょう。

小金中学校吹奏楽部の集合写真
須藤先生と小金中学校吹奏楽部のみなさん

小倉(おぐら) 孝勇(たかお)先生(松戸市立第四中学校・合唱部 顧問)

「合唱が好き」であり続けてもらうためには

小倉孝勇先生は、多くの中学校・高校の合唱部を全国大会に導いてきました。昨年度から顧問を務めている松戸市立第四中学校では、就任から半年も経たないうちに、同校初の全国大会出場(銀賞)も果たしました。合唱指導の教本づくりに携わったり、後進の育成にも注力したりしている小倉先生の合唱に対する情熱の源はどこにあるのでしょうか。

指揮者を目指した少年が音楽教員へ

小倉先生は、クラシック鑑賞が好きだった両親のもとで育ち、身近に音楽のある生活を常に送ってきました。両親の観ているテレビによく映し出されていた指揮者が、いつの間にか小倉先生の憧れとなっていました。その後の中学・高校時代の音楽の先生との出逢いにより音楽の教員を目指すようになった小倉先生は、大学の教員養成課程を経て教師となりました。
「初めて合唱部の顧問を務めた学校では、前任者が優れた指導者だったこともあって引継ぎがうまくいき、コンクールでも上位に入賞。ラジオでもその模様が放送されました。それ以来、合唱の指導を続けています(小倉先生)。」

合唱を好きなまま、大人になってほしい

小倉先生が生徒に合唱を指導する上で、常に心がけていることがあります。それは「自分の指導で合唱を嫌いにさせない」ことです。「高校生になっても、大学生・社会人になっても、ずっと合唱を好きでいてほしい(小倉先生)。」 その願いを叶えるために「一人ひとりを尊重し、その子の良さを引き出すこと」が小倉先生の指導の根幹にあります。「今の時代は、その方が互いに競わせるよりも生徒の力は伸びます。昔と比べると子どもたちが競争に慣れていないという側面もあるかと思いますが、“見捨てないという安心感”が、本人にも、それを見ている他の部員にも、そして保護者の方々にも伝わるのだと思います(小倉先生)。」

安心や安全を感じてもらうための取り組みのひとつが、土日などの休日や夏休みなどに練習を行う際、宿題や自習などの勉強時間を1時間程度設けていることです。「部活動に打ち込んでいる状況だと、程度に大小はありますが、生徒も保護者も学習に対する不安を持っています。それを少しでも解消してあげたいのです。すると、安心できるためか、練習にも集中して取り組めているように思います(小倉先生)。」

先駆者と新しいホールが松戸市の合唱を向上

近年、松戸市の合唱部は、全国大会でも活躍を見せています。小倉先生にその要因について尋ねてみると、1つは「教員の先輩である清水郁恵先生が、松戸市の(中学校の)合唱部を初めて全国大会に連れて行ってくれたこと」と教えてくれました。清水先生が道を切り開いたことで、小倉先生たち後輩の中でも全国を目指す機運が高まっていったそうです。

もう1つの要因として小倉先生が挙げたのは、「森のホール21(松戸市千駄堀)」の誕生でした。同ホールの開館以降、松戸市から全国大会出場を果たす学校が増えたそうです。小倉先生は、「関東でも有数の音響設備と広さを備えたホールを、一般市民や学校が演奏会や学内行事で利用できる点は大きいのではないか」と分析していました。

県大会で2年連続の金賞!関東大会に進出

松戸市立第四中学校は、8月27日に開催された「第77回千葉県合唱コンクール 中学校の部」に出場し、金賞を受賞しました。この結果、9月18日に新潟県で開催される「第77回関東合唱コンクール」への出場権を獲得しました。

千葉県合唱コンクールに先駆けて7月に開催された「第89回NHK全国学校音楽コンクール・千葉県コンクール」を新型コロナ感染症により辞退して悔しい思いをした松戸四中は、有観客となった会場内で見事なハーモニーを披露しました。部長の大泉優香さん(3年)は「昨年は無観客でしたが、今年は有観客のステージに立つことができました。“関東大会よりも先を目指す”ことが目標の下、私たちの歌を観客の皆さんに届けたいという思いが、千葉県大会突破の力になったと思います。関東大会に向けて、自分たちにできることを最大限取り組んで準備しています」と意気込んでいました。関東大会を突破し、2年連続の全国大会出場を目指す合唱部は、大会までにさらなる磨きをかけて臨むことでしょう。

小倉先生からあふれる子どもたちと合唱への愛情

小倉先生に現在の夢を尋ねたところ、返ってきたのは部活動のことではありませんでした。「今年3年ぶりに開催予定の校内の合唱祭で、生徒たちが歌で感動を体験してくれること」と答える小倉先生は、楽しみな笑顔を浮かべていました。
行く先々で結果を出し続ける小倉先生の強さの源は、小倉先生からあふれる合唱と生徒に対する愛情が、同じく合唱を愛する生徒たちと共鳴し合うからなのかもしれません。

第四中学校合唱部の集合写真
小倉先生(前列左)と第四中学校合唱部のみなさん

蓑和(みのわ) 廣太朗(こうたろう)先生(松戸市立河原塚中学校・陸上競技部 顧問)

“日本一仲良く、明るく、笑顔あふれるチーム"が強さの秘訣

蓑和廣太朗先生は、2021年に行われた「第72回千葉県中学校駅伝大会」、「第36回千葉県中学校女子駅伝大会」で男女揃っての初優勝と松戸市初の男女アベック優勝を果たした松戸市立常盤平中学校駅伝部の顧問を昨年度まで務めていました。赴任した先々で特筆すべき結果を示し、優れたランナーを育ててきた蓑和先生から、強いチームをつくる極意を探りました。

パラ陸上でガイドランナーとして走る箕輪先生の写真
蓑和先生(右)は、視覚障害のある和田伸也選手(左)のガイドランナーとしても活躍。2017年には、世界パラ陸上ロンドン大会T11・5,000mで銅メダルを獲得。

恩師の言葉で奮い立った学生時代

小学生時代はサッカーと水泳を習っていたことから、中学生になりサッカー部への入部を考えていた蓑和先生は、陸上競技部の顧問だった大越啓史先生にスカウトされ、陸上競技部に体験入部しました。「いつの間にか入部していた」という蓑和先生は、大越先生の勧めで得意ではなかった中・長距離に取り組み始めました。当初は練習についていくのがやっとでしたが、実力は徐々に向上。中学1年の最初の大会で、小学校時代に松戸市内の長距離種目で1位・2位だった選手たちを退け、見事優勝しました。「彼らの後ろについて、最後の200mで前に出ろ」という大越先生のレース前の指示がうまくいった結果でした。「市内で全くの無名だった自分を優勝させてくれた大越先生についていけば強くなれる」と蓑和先生が思った瞬間でした。

その後も全国大会に出場するなどの躍進を遂げた蓑和先生は、複数の強豪校からスカウトを受けました。その中から選択したのは、地元の松戸市立松戸高等学校でした。「顧問だった西川康弘先生からの “松戸市在住の選手だけで全国高校駅伝に出場したい”という言葉が決め手になりました(蓑和先生)。」

高校でも成長を続けた蓑和先生は、インターハイ3年連続出場などの結果を出し続けたものの、学校が全国駅伝に出場することは叶いませんでした。

これまでの恩師たちとのふれあいの中で、蓑和先生は体育教員を目指すようになります。大学進学時も十数校の箱根駅伝常連校からスカウトを受けましたが、教員免許も取得できて、かつ箱根駅伝を走るチャンスもあるという理由から東洋大学へ進学しました。しかし、蓑和先生が入学する直前の大会から東洋大学の黄金時代が訪れます。周囲のレベルの高さ、そしてケガにも悩まされ、在学中に箱根駅伝を走ることはできませんでした。

赴任先を強化し、結果を出し続ける

教員の道へと進んだ蓑和先生は、松戸市立第六中学校を経て、松戸市立河原塚中学校に赴任しました。同校の当時の駅伝部は、平成以降一度も千葉県大会に進出できないほどの実力だったにも関わらず、蓑和先生の指導によって24年ぶりの千葉県駅伝大会出場を達成。さらに次の赴任先である松戸市立小金中学校では、東葛駅伝(※1)での同校58年ぶりの優勝も果たしました。

※1 東葛飾地方中学校駅伝競走大会の略称。千葉県東葛地方に属する公立中学校全校と一部の私立中学校が参加して行われる駅伝大会。

逸材を見出す蓑和先生の眼力

少子化などの影響もあり、駅伝部に所属する人材を集めるのは、年々難しくなりつつあります。現在は多くの学校が、部活動を引退した3年生や他の部活動に所属している1,2年生をレンタルあるいは兼任としてスカウトします。

その際、蓑和先生は、体育の授業や体育祭、他の部活動で体を動かしている様子などを観察し、既に速い生徒だけでなく、走るフォームのよい生徒、現在はまだ実力不足であるものの今後速くなる可能性を秘めている逸材を発掘し続けてきました。その眼力が、赴任する先々の学校での結果につながっていると考えられます。

蓑和先生と笑顔で走る部員たちの写真
河原塚中学校での練習風景

強いチームは仲が良い

赴任する先々で好成績を収める秘訣は、「仲の良いチームをつくること」と蓑和先生は教えてくれました。「どの学校に行っても、“日本一仲良く、明るく、笑顔あふれるチーム"をモットーにしています。仲の良いチームは強いです(蓑和先生)。」

では、具体的にどのようにすれば、仲の良いチームをつくれるのでしょうか?「例えば、準備や片付け、荷物運びといった雑用を全て上級生がやるようにしています。部活動に慣れていない1年生は、練習で精一杯。上級生が雑用をやるようになると、部全体に会話やコミュニケーションが生まれ、チームの雰囲気がどんどんよくなっていきます(蓑和先生)。」

陸上競技部部長の横山青昊(せいご)さん(3年)も「蓑和先生の指導はとても緻密で、常に私たちの個々にあった練習メニューを考えてくれています。4月の指導開始からたった3ヶ月で、全員が大きく自己ベストを更新しました。その背景には、先生・仲間とのコミュニケーションがとても増えたことにあると感じています。グラウンドに立てば先輩・後輩の壁はなく、仲良く活気がありながらもやる時はやるメリハリのあるところが河中の良いところです。昨年は東葛駅伝と新人駅伝が開催されず、とても辛い思いをしました。今年こそはこのチームを率いて千葉県駅伝大会に出場したいです。蓑和先生となら関東駅伝、全国駅伝を目指せると今は思っています」と、チームの雰囲気の良さと実力の向上を感じ取っています。

河原塚中を県に、もう一度松戸市を全国へ

結果を出し続ける蓑和先生の今後の目標は2つあると言います。
「まず目指しているのは、現在赴任している河原塚中学校の千葉県大会出場です。間違いなく力はついてきているので、あとは大会までにどれくらいそれを伸ばせるかだと思います(蓑和先生)。」 チームはいま、千葉県大会の出場権獲得へ向け、9月22日開催の松戸市予選での上位入賞を目指してトレーニングの真っ最中です。

蓑和先生はもう1つの目標について「もう一度松戸市の選手を全国駅伝へ導きたい」と力強く答えてくれました。蓑和先生ならば、どちらの目標もそう遠くない未来に実現してしまうのではないか。その言葉からは、そう予感させるほどの意志が伝わってきました。

河原塚中学校陸上競技部の集合写真
蓑和先生と河原塚中学校陸上競技部のみなさん

三井 由香先生(松戸市立松戸高等学校・女子ソフトボール部 顧問)

実業団での大活躍を経てたどりついた女子ソフトボール部の顧問

松戸市立松戸高等学校女子ソフトボール部の顧問・三井由香先生は、実業団で選手・監督として活躍し、所属チームを国内ソフトボールの最高峰・日本女子ソフトボールリーグ1部へと昇格させた経歴を持っています。三井先生がどのようにして市立松戸高校女子ソフトボール部を立ち上げたのかについて伺いました。

ソフトボールに中・高・大・実業団と取り組む

三井先生がソフトボールと出会ったのは中学生の時でした。「特段優秀な選手ではなかったですが、もっとうまくなりたいと思った」という三井先生は、高校進学後もソフトボール部を選択。ピッチャーとして活躍し、国体の予備選手に選出されるまでになりました。高校卒業後の進路選択では実業団から勧誘されたものの、将来を考えた結果、大学でソフトボールに取り組むことにしました。大学でも活躍した三井先生は、卒業後に教員になることも視野に入れていましたが、最終的には実業団入りを選択し靜甲(せいこう)株式会社の女子ソフトボール部に入団しました。

抜群の行動力でチームの強化と昇格を達成

長年の経験とソフトボールに関するトレーニングの研究歴もあった三井先生は、「いま考えると、後先考えずに行動していた」と本人が語るほど、チームにさまざまな進言をしていました。気づけば入団1年目にも関わらずスカウトを任せられたり、チームの運営母体である本社の会長に日本女子ソフトボールリーグへの加盟を提案するなど、抜群の行動力を発揮。その進言を実現するため、後に三井先生は監督兼選手としてチームを率い、同チームを日本女子ソフトボールリーグ1部昇格へと導くことに成功しました。

実業団から教員へとキャリアチェンジ

実業団を退団した三井先生は、かつて自分の将来の選択肢にあった教員の道を歩み始めます。実業団時代、高卒で入団する選手たちの体づくりや動かし方に課題を感じていました。「ジュニア世代での育成が必要なのでは」と思っていたこと、また、実業団時代に実施していた地域交流の一環で子どもたちにソフトボールを教える楽しさを味わえたことも大きな理由でした。

さまざまな縁がつながり、三井先生に「松戸市立松戸高校に女子ソフトボール部を創設してほしい」という話が舞い込んできました。かつて三井先生からソフトボールを教わった経験のある同校の複数の3年生を中心に、まずは同好会という形で2017年5月に部の礎を築きました。しかし、3年生が卒業してしまえば、部員はいなくなってしまいます。そこで三井先生は市内の中学校に足しげく通い、地道な勧誘を続けました。その甲斐もあり、メンバーも徐々に集まり、2019年には部活動へと昇格しました。現在でも中学校への訪問の他、中学生を対象にした部活動体験会の定期開催を通じて、少しでも女子ソフトボール部の雰囲気を感じてもらえるような工夫をしています。

新チームの目標は千葉県大会ベスト8

3年生が卒業した新チームで部長を務める中沢亜美花さん(2年)も、体験会を経て市立松戸高校への進学を決めた1人です。三井先生からは「ソフトボールの技術だけでなく、礼儀や常識といった“人間としての成長”も学んでいる」そうです。
中沢さんたち新チームの目標は、千葉県大会でのベスト8進出です。次は、11月に開催される千葉県高等学校新人大会が控えています。三井先生は「ベスト8の壁を超える力はある」と期待しながらも、「あとは全てを出し切れる、気持ちの強さが必要」と強化したいポイントを指摘していました。

栄養面でもチーム強化を図る

チームの強化として取り組んでいることは、ソフトボールの技術や精神面の鍛錬だけではありません。部員とその保護者に対し、栄養指導もしています。同校への赴任当初に野球部の副顧問を務めていた頃、野球部で取り組み始めた栄養指導について、企業から学ぶ機会がありました。効果への期待が高まった三井先生は、同好会にも栄養指導を取り入れました。部員の保護者からの協力を仰ぎながら取り組んだところ、練習後の疲労が残りにくくなったり、夏バテを起こしにくくなったりといった効果が見られました。それ以降女子ソフトボール部では、栄養バランスの取れた食事のレシピを部員の保護者に提供して摂取する栄養を整えたり、口にしたものを記録させたりするなど、栄養指導を継続しています。

作り上げる気質のルーツは実家の家業にあり

実業団ではさまざまな提案を組み上げてチームを強化したり、市立松戸高校では0から1を生んだり、何かを作り上げるのが好きなのですね、と三井先生に語りかけたところ、その原点について教えてくれました。

「実家が工場なんです。子どもの頃から工具が身の回りにある生活でしたし、裁縫などでつくるのも好き。体にしみ込んでいる“モノづくりの精神"が、実業団にもソフトボール部にも影響したのかもしれません(三井先生)。」

市立松戸高校女子ソフトボール部には、まだまだ成長の余白が残っています。クラフトマンシップあふれる三井先生の手腕から今後も目が離せません。

市立松戸高校ソフトボール部の集合写真
三井先生と市立松戸高校 女子ソフトボール部のみなさん

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